先進医療の知識

近年、関心がますます高まっている先進医療の実績をわかりやすく解説します。

目次

医療費と患者数

!!傾向・ポイント!!

先進医療を受けた患者は右肩上がりに増加。平成29年の患者数は平成23年と比較すると約2.3倍にも上る。

また、医療費はおよそ207億円となり、そのうち粒子線治療※1の医療費がおよそ113億円で全体の半分以上を占める。

※1:放射線治療の1つであり、特に集中的にがんに対して方写真を当てることができるため、副作用が少ないなどのメリットがある。粒子線治療には陽子線治療と重粒子線治療がある。

実施機関数の変化

!!傾向・ポイント!!

先進医療を実施している医療機関は緩やかに増加し、平成29年には885施設となった。

がんの代表的な先進医療である
重粒子線治療は5施設
陽子線治療は13施設で、
いまだ専門的ながんの治療を受けられる施設は限られるといえる。

粒子線治療実施件数の動向

!!傾向・ポイント!!

平成28年より一部のがんに対して保険適用となり、平成30年には前立腺がんなども保険適用※2となる見込みで、その有効性が証明されてきている

全体として右肩上がり傾向にあった実施件数は、平成28年に実施件数が減少し、その後横ばいで推移。専門医やスタッフの人員配置などの施設基準を厳しくしていることが要因と思われる。

※2:以下、保険は健康保険などの公的な保険制度のことを表す。

技術数の変化

!!傾向・ポイント!!

保険適用および承認取消による減少で近年100種類程度となっている。

平成29年6月30日時点では、
・1種類が保険適用、
・12種類が取下げ・削除となる中、
新たに15種類の技術が承認された。
NEW 前立腺がんの重粒子線治療、根治切除が可能な幹細胞がんの陽子線治療etc.

平成29年実績ランキング

!!傾向・ポイント!!

「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術※3」「前眼部三次元画像解析※4」の実施件数は大きく増加し、10,000件を超えている。

医療施設によっては、これら先進医療の技術を選択することが増えてきているといえる。

※3:白内障を改善するために眼内にレンズを挿入する手術方法。
※4:角膜、虹彩などの断層面の観察や立体構造の数値的解析を行う。緑内障等の検査に用いる。

先進医療の技術が新たに15種類も承認されました。今後も更なる技術の検証が進み、治療の選択肢を増やすことに貢献しそうです。一方で専門的な治療を受けられる施設はいまだ限られている為、受診する病院によって先進医療を受けられない場合もあるようです。

先進医療の基礎知識

先進医療とは・・・

将来の保険導入のために評価を行なっている段階の治療です。例外的に、保険診療との併用が認められています。随時、新しい技術の追加や削除を審査し更新されています。

先進医療Aと先進医療Bの違いは?

下記のように分けられます。

先進医療A

薬事法の承認が済んでいる技術。
または、未承認でも、人体への影響が極めて小さい技術。

【技術例】
・多焦点眼内レンズを用いた、水晶体再建術
・陽子線治療(頭頸部腫瘍、肝臓腫瘍など)
・重粒子線治療(頭頸部腫瘍、肝臓腫瘍など)

先端医療B

薬事法で未承認・適応外の薬剤や医療機器を使用する技術。または、使用しない場合でも有効性などの面から、重点的な観察・評価が必要な技術。

【技術例】
・ダヴィンチ(内視鏡下手術用ロボット)を用いた胃切除術
(根治切除が可能な胃がん)
・陽子線治療(肝内胆管がんで切除不能など)
・重粒子線治療(前立腺がんで遠隔転移なしなど)

先進医療の技術数はなぜ増えたり減ったりしているの?

審査で承認されると追加になります。
また、実績が評価され保険適用になれば、先進医療ではなくなります。
その他には、実施例が少ない、あるいは効果が証明できないなどの理由から承認の取り下げや削除が行われることもあります。

先進医療はどこで受けられるの?

先進医療は医療技術ごとに申請して、承認された設備・技術を備えた医療機関でしか行うことができません。

かかりつけの医師が先進医療の専門外の場合、情報が手に入らない場合もあります。どの治療法を適用するかについては、医師によって意見が異なることがあります。