法人保険の名義変更プランでの節税はもう終わり?

効果的な節税対策として経営者の中で人気のあった法人保険の名義変更プラン。

しかし、2021年3月中旬にこの名義変更プランの撤廃を伝える内容の通告が行われました。

いわゆるホワイトデーショックと言われている出来事です。どうしてそんなことが起きたのでしょうか。

今回の記事では、

  • 名義変更プランの基本
  • 名義変更プランで節税ができる仕組み
  • 名義変更プランがどう改正されたのか?
  • 名義変更プランの今後は?
  • 法人保険は節税を目的にしてはいけない

を中心にお伝えしていきます。

名義変更プランに加入されている経営者、名義変更プランを検討されている方必見です。

目次

法人保険の名義変更プランの基本

そもそも名義変更プランとはどういうものなのでしょうか。まずは名義変更プランの基本をお伝えしていきます。

法人保険の名義変更プランとは?

名義変更プランとは、かんたんに言うと低解約型逓増定期保険などの法人保険を利用した節税手法のことです。法人契約で加入した低解約型逓増定期保険を、解約返戻金が低いうちに個人に名義を変更することで、法人、個人ともに税負担を抑えることができると言われています。

低解約型逓増定期保険とは?

では、低解約型逓増保険とはどういった保険なのでしょうか。

まず、低解約型というのは解約返戻金が少ない代わりに保険料を低く抑えられるという特徴があります。

逓増には数量が次第に増えていくという意味があり、逓増定期保険とは加入した時から段階的に保険金額が増えていくタイプの保険です。

低解約型逓増定期保険はこの2つを組み合わせたもので、契約からしばらくの期間は解約返戻金を低く抑え、その期間を超えると一気に解約返戻金が増えるタイプの保険になります。

名義変更プランにはどんなメリットがあったのか?

名義変更プランにはどんなメリットがあったのでしょうか。ちなみに今はホワイトデーショックによりここでお伝えするメリットはほとんど享受できなくなっていますのでご注意ください。

名義変更プランのいちばんのメリットは節税です。名義変更プランは、主に経営者や役員向けの役員報酬、退職金などに活用されます。

たとえば、通常役員報酬は給与所得扱いとなります。一方、名義変更プランで法人から個人に名義変更された保険の解約返戻金は一時所得という扱いになります。一時所得は所得税よりも税金が安くなりますので、高い節税効果が期待できました。

法人側としても保険料の損金算入で法人税を節税しながら、役員への報酬や退職金に備えることができるというメリットがありました。

名義変更プランで節税できる仕組み

ここからは名義変更プランで節税ができる仕組みを見ていきましょう。

まず、法人保険で低解約型逓増保険に加入します。低解約型逓増保険なので契約した段階では解約返戻金は低く設定されています。加入しているのは法人なので、この段階で保険料を支払うのは法人です。

次に、解約返戻金が高くなる前に保険の名義を法人から個人に変更します。今までのルールでは名義変更時点での解約返戻金で保険の価値が評価されるため、支払った保険料よりも安い金額で個人に譲渡することが可能になります。

個人に譲渡した後は保険料を支払うのは個人です。そして、解約返戻金が高くなったタイミングで保険を解約します。保険は個人に譲渡されていますので個人が解約返戻金を受け取れるという仕組みです。

名義変更プランが改正に?

名義変更プランは節税面で大きなメリットがありますが、その反面、法人から個人への資金移転と解釈される可能性があり、税法上グレーなところがありました。

そんな名義変更プランが2021年3月のホワイトデーショックにより改正されました。

では、ホワイトデーショックで何が起きたのでしょうか。名義変更プランはどう改正されたのでしょうか。

一緒に見ていきましょう。

ホワイトデーショックとは?

2021年3月に国税庁が保険会社に通告を行いました。通告の内容はかんたんに言うと名義変更プランの撤廃を伝えるものです。これがホワイトデーショックと言われるものです。

2019年2月にも保険の改正が行われ、当時保険業界に大きな激震が走ったことからバレンタインショックと言われました。今回はそのバレンタインショックと対比して、ホワイトデーショックと言われています。

名義変更プランはどう改正されたのか?

今までは「名義変更時の解約返戻金=名義変更時の保険の評価額」でした。それがホワイトデーショックの改正により「名義変更時の解約返戻金が資産計上額の7割に満たない場合は、名義変更時の評価額=ピーク時の解約返戻金」と見なされることになりました。

改正によって名義変更プランのメリットが失われる?

ホワイトデーショックの改正によって名義変更プランのメリットは失われてしまいました。

名義変更プランは「名義変更時の解約返戻金=名義変更時の保険の評価額」という前提があってこそ、節税のメリットを享受することができたからです。

今回の改正ではその前提が大きく変わってしまいました。解約返戻金が低いうちに名義変更しても「解約返戻金=保険の評価額」とはならず、安く保険を譲渡することができません。

名義変更プランは税制の抜け道を活用していたものですが、今回の改正でその抜け道がふさがれる形となりました。

名義変更プランの今後は?

今後、低解約型逓増保険などの名義変更プランはどうなるのでしょうか。いろんな可能性が考えられると思いますが、販売数の減少や販売停止の可能性も十分考えられるでしょう。

また、もしすでに名義変更プランの保険に入っている場合はどうすればいいのでしょうか。

まず考えられるのは名義変更をしないという方法です。これであれば問題はありません。ただし、低解約型逓増保険は、一般的に解約返戻金が低い期間が終わると解約返戻金のピークを迎え、その後下がっていきます。そのため、これに対する対処法を考える必要はあるでしょう。

また、もしこれから低解約型逓増保険の加入を検討されている場合は、改正の内容を十分に確認した上で慎重に検討しましょう。第三者のプロに相談するのもひとつの方法だと思います。

法人保険の目的を再確認しよう

法人保険で節税対策をしようと考えている経営者の方は多いでしょう。実際、節税効果を謳う法人保険のセールスマンもたくさんいます。もちろん保険料を損金で算入することによって法人税を節税することは可能です。

しかし、節税を保険の目的にしてはいけません。何のために法人保険に入るのか。今一度法人保険の目的を再確認しましょう。

法人保険の目的は大きく企業防衛、福利厚生、事業継承の3つです。節税を目的にした保険というのは本来の保険の目的から外れるものであり、今後も国税庁によって厳しく改正されていく可能性があります。

経営者にとって節税対策というのは頭の痛い悩みのひとつです。これからも節税対策を売りにした魅力的な保険商品が出てくるかもしれません。ただ、その時は税法的に問題がなかったとしても、いずれ改正が行われ最終的に損をしてしまうということだってあり得るでしょう。

法人保険は信頼できるプロに相談することをおすすめします。

まとめ

今回は法人税の名義変更プランについて解説してきましたがいかがだったでしょうか。

名義変更プランは効果的な節税対策として人気がありましたが、ホワイトデーショックによりそのメリットが享受できなくなってしまいました。

保険の目的は企業防衛、福利厚生、事業継承の3つにあるのであって、節税のためではありません。法人保険は正しく活用すれば、企業の強い味方になってくれることは間違いないでしょう。

しかし、正しく活用するというのはかんたんではないかもしれません。

法人保険を検討している場合は信頼できるプロに相談しましょう。